Cloudflare Tunnel・Access・Zero Trustの違いと使いどころ
Cloudflare Tunnelだけで安全になるわけではありません。Tunnelは通信経路、Accessは認証・認可、Zero Trustはそれらを組み合わせる設計思想です。3つの役割、活用例、料金、導入時の注意点を整理します。
まず3つの言葉を分けて考える
Cloudflare Tunnel
内部のサーバーからCloudflareへ、外向きに安全な通信経路を作る仕組み。公開IPや受信ポートを原則として必要としません。
Cloudflare Access
アプリの手前で利用者や端末を確認し、通す・拒否するを決めるZero Trust Network Access製品です。
Cloudflare Zero Trust
社内ネットワークにいるだけでは信用せず、アクセスのたびにID、端末、場所などを確認する考え方と製品群です。
たとえるなら、Tunnelは「建物までの専用通路」、Accessは「入口の警備員」、Zero Trustは「関係者らしく見えても入場条件を毎回確認する警備方針」です。
Cloudflare Tunnelの仕組み
通常、社内サーバーや自宅サーバーを外部公開するには、グローバルIPを割り当て、ルーターやファイアウォールの受信ポートを開けます。Cloudflare Tunnelでは、内部に置いた軽量コネクターcloudflaredがCloudflareへ外向きの接続を確立します。
cloudflaredは主にQUICまたはHTTP/2を使い、Cloudflareのネットワークへ接続します。ファイアウォールはTCP/UDP 7844番の外向き通信を許可し、受信通信を閉じる構成にできます。オリジンサーバーをインターネットから直接到達できない状態にしやすい点が強みです。
Tunnelで得られるもの
- 固定グローバルIPやポート開放に依存しない公開経路
- オリジンサーバーのIPアドレスを隠しやすい構成
- 1本のTunnelから複数のホスト名・サービスへの振り分け
- 複数の
cloudflaredを使った冗長化 - CloudflareのDNS、TLS、DDoS対策などとの統合
Cloudflare Accessは何を確認するのか
Accessは、保護対象のアプリへリクエストを通す前にポリシーを評価します。Google Workspace、Microsoft Entra ID、OktaなどのIdentity Provider(IdP)と連携できるほか、メールのワンタイムPINも利用できます。
ポリシーでは、たとえば次の条件を組み合わせられます。
- 特定のメールアドレスやメールドメイン
- IdPのユーザーグループ
- 接続元の国やIPアドレス
- 多要素認証の方法
- Cloudflare One Clientへの接続状態
- OSバージョンやディスク暗号化などの端末状態
- 機械間通信向けのService TokenやmTLS証明書
人がブラウザーで使うアプリだけでなく、APIや自動処理にService Tokenを使う構成も可能です。許可後は署名付きJWTが発行され、アプリ単位のセッションとして扱われます。
従来型VPNとの違い
| 観点 | 従来型VPN | Tunnel+Access |
|---|---|---|
| 許可の単位 | ネットワークやサブネット単位になりやすい | アプリ、ホスト、ユーザー単位に絞りやすい |
| Webアプリの利用 | VPNクライアントが必要なことが多い | 公開ホスト名型ならブラウザーだけでも利用可能 |
| 判断材料 | 接続資格とネットワーク位置が中心 | ID、端末状態、国、MFAなどを組み合わせ可能 |
| 内部への入口 | VPN装置への受信経路が必要 | cloudflaredからの外向き接続 |
| 向く用途 | 幅広いプロトコル、双方向通信、拠点接続 | 社内Web、管理画面、アプリ単位のリモートアクセス |
AccessがVPNを常に置き換えるわけではありません。VoIP、SIP、サーバー起点の通信、端末同士の接続、完全な拠点間通信では、IPsec、GRE、Cloudflare Meshなど別方式が適する場合があります。
Zero Trustは「一度ログインしたから信用」ではない
Zero Trustは「社内にいる」「VPNへ接続できた」といったネットワーク位置だけで信用しない考え方です。誰が、どの端末から、何へ、どの条件でアクセスしようとしているかを検証し、必要最小限だけ許可します。
- 明示的に検証する:ID、MFA、端末状態、接続元などを確認する。
- 最小権限にする:社内ネットワーク全体ではなく、必要なアプリだけ許可する。
- 侵害を前提にする:認証情報や端末が侵害されても被害が広がりにくい境界を作る。
Cloudflare Zero Trustは、この考え方をAccess、Gateway、Cloudflare One Client、Tunnelなどで実装する製品群です。Tunnel単体を導入しただけでZero Trustが完成するわけではなく、Accessポリシー、IdP、端末管理、ログ監視まで含めて設計します。
代表的な活用例
社内Webシステム
社内Wiki、勤怠、BI、管理画面をTunnelで接続し、会社アカウントとMFAをAccessで要求します。
自宅サーバー
Home Assistantや個人用ダッシュボードへ、固定IPとポート開放なしで接続します。管理画面にはAccessを必ず併用します。
開発プレビュー
ローカルWebアプリを一時URLで共有します。Quick Tunnelはテスト専用で、本番利用には向きません。
Webhook・API
内部のAPIを外部サービスから到達可能にします。Webhook署名の検証はアプリ側でも必要です。
SSH・RDP
管理用サーバーへの接続をIDベースで制御します。方式によって利用者側にもクライアントが必要です。
機械間通信
Service TokenやmTLSを使い、人のログイン操作なしで内部APIへのアクセスを認可します。
料金の目安
以下は2026年8月24日時点でCloudflare公式料金ページに表示されているSASE/Workspace Securityプランの概要です。料金や含まれる機能は変更される可能性があるため、契約前に最新の公式ページを確認してください。
| プラン | 料金 | 主な対象 | 検討ポイント |
|---|---|---|---|
| Free | 0ドル、期限なし | 50ユーザー未満のチーム、検証 | Accessログの標準保持は24時間。小規模導入やPoC向け |
| Pay-as-you-go | 1ユーザーあたり月7ドル | 50ユーザーを超えるチーム、限定的なSSE用途 | 公式ページ上では個別のEnterpriseサポートを必要としない組織向け |
| Contract | 年間契約・ユーザー単価は個別見積もり | 本格的なSASE/Workspace Security導入 | 高度な機能、長期ログ、サポート、組織要件を含めて見積もる |
Cloudflare TunnelはFreeプランから利用できます。ただし、実際の費用判断ではTunnelだけでなく、Accessを利用する人数、ログ保持、Gateway、ブラウザー分離、データ保護、サポート、SLAなどを含めて考える必要があります。
公式ドキュメントに記載された標準上限では、1アカウントあたりTunnel 1,000本、ルート1,000件、1つのTunnelにつきアクティブなcloudflaredレプリカ25個です。Enterpriseでは上限引き上げを相談できる場合があります。
導入時の注意点
- Accessを先に設計する:Tunnelを公開してから認証を考えるのではなく、許可対象と拒否条件を先に決めます。
- EveryoneやBypassを安易に使わない:設定によっては認証を実質的に無効化します。
- アプリ側の認証も残す:重要な管理操作では多層防御を考えます。
- Tunnel Tokenを秘密情報として扱う:漏えいすると第三者がコネクターを起動できる可能性があります。
- 冗長化する:本番では異なるホストで複数の
cloudflaredを動かします。 - 元のIPの扱いを確認する:HTTPでは
CF-Connecting-IPを利用できますが、非HTTPでは元の接続元IPがオリジンへ渡らない場合があります。 - Cloudflare依存を受け入れられるか考える:障害時の管理経路、DNS、IdPの復旧手順も用意します。
小さく始めるためのチェックリスト
- 外部から使いたいWebアプリを1つ選ぶ。
- Cloudflare Zero Trust組織とテスト用Accessポリシーを作る。
- アプリへ到達できる端末に
cloudflaredを導入する。 - Tunnelとホスト名を設定し、許可ユーザーだけログインできることを確認する。
- 未認証、対象外ユーザー、対象外端末が拒否されることも確認する。
- ログ、Token管理、コネクター停止時の影響を確認する。
- 本番化するなら冗長化と緊急アクセス手順を決める。
まとめ
Cloudflare Tunnelは、内部サービスを受信ポートなしでCloudflareへつなぐ便利な経路です。Cloudflare Accessは、その経路を通ってよい利用者や端末をアプリ単位で判断します。Zero Trustは、この2つを含めて「場所では信用せず、毎回検証し、必要最小限だけ許可する」設計です。
社内Web、自宅サーバー、開発環境の共有には相性がよく、Freeプランで小さく試せます。一方で、ログ保持、可用性、認証設定、Cloudflareへの依存、VPNを置き換えられない通信もあります。まず重要度の低いWebアプリを1つ選び、許可だけでなく拒否のテストまで行うのが現実的です。
参考資料
- Cloudflare Tunnel — Cloudflare One docs
- Private web application — Cloudflare One docs
- Access policies — Cloudflare One docs
- Connectivity options — Cloudflare One docs
- Zero Trust & SASE Plans & Pricing — Cloudflare
- Zero Trust logs — Cloudflare One docs
- Account limits — Cloudflare One docs
- Quick Tunnels — Cloudflare One docs
